82: 2026/02/10(火) 21:00:00 ID:???00


最初から:花帆「あたし、再生産」

前回:花帆「あたし、再生産」第四話

吟子(幼馴染という存在に……どこか憧れを抱いていた)

吟子(昔から同年代の付き合いは薄く、そういった友人に恵まれていなかったからかもしれない)

吟子「……本当に、院友って何? そんなの、ズルい……」ギュッ…

吟子(もしも、先輩の住んでる場所が違ったら。もしも、幼い頃に病院に通っていたら。もしも、もしも……)

吟子(──もしも。あの舞台の上で、私がきらめけたらのなら……)

吟子(先輩は、振り向いてくれるでしょうか?)

83: 2026/02/10(火) 21:01:00 ID:???00


第五話 月夜見海月

.

84: 2026/02/10(火) 21:02:00 ID:???00
吟子「…………」ジー

小鈴「? 吟子ちゃん?」

姫芽「どうしたの、急に鍵を見ながら固まって……ん、あれ~?」

姫芽「それ、もしかしてせんぱいの部屋の鍵~?」

吟子「……うん。花帆先輩の部屋の、合鍵」

吟子「これって……、いつまで持ってていいのかな、って思って」

85: 2026/02/10(火) 21:03:00 ID:???00
姫芽「……? いつまで、って……」

小鈴「先輩が卒業したら使わないんだし、もうそろそろ返さなきゃなんじゃないかな? 徒町、さやか先輩からはまだだけど……」

吟子「そう、だよね。合鍵を、返す……」ポツリ

姫芽「……んん? その反応はもしかして~、吟子ちゃん……」

姫芽「──大好きなかほせんぱいの合鍵は、離さずずっと持ってたい……みたいな恋心、的な感じかにゃ~?」ニヤニヤ

吟子「!? 別に、そんなんじゃ……! た、ただ……」ボソッ

吟子(返したくない。返してしまえば、消えてしまう…………先輩との繋がり、が)

吟子(それは絶対、“永遠”には、なれない。……だから眩しくて、手放すのは苦しい)

吟子「……」

ガチャ

瑠璃乃「──姫芽~? まだ教室いるー?」ヒョコ

86: 2026/02/10(火) 21:04:00 ID:???00
姫芽「! あ~、るりちゃんせんぱいとさやかせんぱい~。わざわざ部活の迎え、来てくれたんですか~?」

瑠璃乃「そうそう。あ、そういや姫芽はちょっち用事あるから……今日の夜、“ルリの部屋”にも来てほしくて」

姫芽「!?!!!?!!」ガタッッ

さやか「ふふ。わたし達はいつも通り、スクールアイドルとしてレッスンの時間ですよ。行きましょうか、小鈴さん」

小鈴「はいっ、さやか先輩! 徒町、すぐに行きます! ……えっと」チラッ

小鈴「吟子ちゃんも一緒に行く? それとも……」

吟子「あー……いや、花帆先輩が迎えに来てくれるはずだから、ここで待ってるよ。小鈴は先に行ってて」ニコッ

87: 2026/02/10(火) 21:05:00 ID:???00
────

バタン…

吟子(……つい、嘘をついた。先輩はBloom Garden Partyに向けて忙しいから、私に構ってる時間なんてないのに)

吟子「はぁ……」

吟子(どうしたら、いいんだろう。もしも、本当にいま花帆先輩がここに来てくれたら)

吟子「…………」

吟子(私1人だけ残された、教室。……もしも、このまま、消えてしまえたら……)

~~♪♪

『お持ちなさい あなたの望んだその星を』

吟子「……」

吟子「あぁ、そっか」

88: 2026/02/10(火) 21:06:00 ID:???00
────

──

─パッ‼︎

セラス「容姿端麗、才色兼備、誰もが羨む佇まい、プリティキュートでマジ尊い!」

バッ…‼︎

セラス「──105期生、セラス 柳田 リリエンフェルト! 此の命さえ、捧げてもいい!」

89: 2026/02/10(火) 21:07:00 ID:???00
吟子「伝統を尊び、未来へ繋ぐ。想いを込めて、織って魅せましょう」

…ビシッ‼︎

吟子「──104期生、百生吟子。ここに、生きた証明が残るように……!」

『 それでは、オーディション4日目 』

『 “嫉妬のレヴュー”の開演です 』

90: 2026/02/10(火) 21:08:00 ID:???00
バッ‼︎

吟子「……セラス」スッ…

セラス「えっ……、吟子先輩の武器、棍棒なんですか……!?!?」

吟子「棍棒じゃなくてメイス……いや、そんな事よりも」

ギュッ…

吟子「……まさか、セラスまでこのオーディションに参加してるなんて、ね」

セラス「? それはまあ……飛び入りですが、スクールアイドル──舞台少女なんで」ドヤッ

吟子「…………」

セラス「吟子、先輩? あの、何か……」

吟子「……………………………………羨ましい、なぁ……」ポツリ

セラス「……吟子?」

91: 2026/02/10(火) 21:09:00 ID:???00
『ふむ。オーディションの私物化ですね。わかります』

『舞台の上で、舞台少女が胸の内をぶつけ合う……わかります』

吟子「もしも、永遠になれないのなら。この感情も、世界も、何もかも…………このまま全部、消えてしまえば良いのに!!」ユラッ…

─ドシン…‼︎

セラス「!?? こわっ……え、吟子先輩!?!?」

吟子「セラスがもしも、先輩と同じ病院じゃなかったら? そうしたら、全部違ってたの? 私が、花帆先輩の隣に居られたの??」

セラス「何何何???!! え、吟子先輩だってスリーズブーケとして、花ちゃんの隣に立ってますよね……?」

吟子「そうじゃない。……そうじゃないんやよ、セラス」

吟子「あくまでそれは“今”だけの事で、いつかは終わるんだ……だから、そのための繋がりが欲しい。絶対消えない、キズナが」

セラス「え」

吟子「ねぇ、教えてよ……セラス」スッ…

吟子「──私にはないものを、欲しがるのは駄目、でしょうか?」

♪ 月夜見海月
https://www.youtube.com/watch?v=iPIxvDi_dS0

92: 2026/02/10(火) 21:10:00 ID:???00
ズッ…

吟子「似合うわけ、ないくせに……夢見るのは変、でしょうか?」

ズシッ‼︎

セラス「!?! ちょ……ぎ、吟子先輩!? ひぇ、セラスともあろう可愛い後輩になんて事を……!」

吟子「大丈夫、痛くしないから……」スッ…

キンッッ…‼︎

セラス「っ…………あの、吟子、先輩!」バッ

93: 2026/02/10(火) 21:11:00 ID:???00
セラス「変えられない歴史の重要さ……とか! 伝統が大好きな吟子先輩なら、ちゃんと分かってるんじゃないんですか?!」

吟子「……! うん……それは、もちろん」ニコッ

吟子「過去は、変えられない。梢先輩と一緒に花帆先輩の実家に行った時、私だってそう知った。……でも」

吟子「──だから、ダメなんだよ」

94: 2026/02/10(火) 21:12:00 ID:???00
セラス「……え?」

吟子「あの日作った思い出、私が見つけた『ホントのたいせつ』……かけがえのない先輩との“今”が、もうすぐ、途切れちゃう……」

セラス「……、……それって」

吟子「──どうして、この体はいつも透明だ……」

吟子「セラスみたいに、幼馴染だったら……卒業しようが何しようが、絶対に消えない繋がりがあるのに、私はっ!!」

吟子「私、は……。……永遠を、信じ、られないよ……」カタッ…

セラス「──願うだけじゃ、海の、月にはなれない!!」

♪ 月夜見海月(セラス 柳田 リリエンフェルトver.)
https://youtu.be/bdY-t4j9Ek8?t=3279

95: 2026/02/10(火) 21:13:00 ID:???00
バッ‼︎

吟子「…………え」

セラス「……………………もう──!!」

セラス「“永遠”がなんなんですか、吟子先輩!? 泉の先輩にしろ吟子にしろ、どうしてそんな概念に拘るの!!!」プンプン

吟子「えっ……え???」

吟子(セラスがこんなに怒ってるの、初めて見た……)

ザッ…

シャキン…‼︎

セラス「──わたしは!!」

セラス「病院にいたときも、瑞河にいたときも、蓮ノ空にいるときも“今”を大切にしてた!!」

セラス「いつか“今”は消えちゃう? それがなんですか……。同じ時間が永遠に続くなんて、その方がよっぽど──つまらない!!」

吟子「……!」

96: 2026/02/10(火) 21:14:00 ID:???00
…パッッ‼︎

『舞台のスポットライトが、舞台の主役を照らし出している……!』

『わかります。本来の歌割りを奪い、ステージに認めさせた……』

『これこそ、舞台少女。スクールアイドルの“きらめき”ですね。わかります』

吟子「っ……!」

キンッ…キィン‼︎

セラス「というか吟子先輩だって、花ちゃんの“後輩”っていう繋がりがあるんだから……本当は、悩む必要だってないんですよ」

吟子「それは……」

セラス「それに。夏合宿のとき、吟子先輩が教えてくれたじゃないですか。想いがない人なんていない……それは“今”を生きているから!」

吟子「!」

セラス「誰かのことをそう想えるだけでも、それが消えない“繋がり”になる筈……! ──だから、吟子先輩っ!」バッ

セラス「届け、わたしの歌──!!」ザッ…

…キィィィン‼︎!

97: 2026/02/10(火) 21:15:00 ID:???00
吟子「……!」

ファサッ…

ザッ…‼︎

セラス「──ポジション・ゼロ!!」

『オーディション4日目、終了します』

98: 2026/02/10(火) 21:16:00 ID:???00
────

──

スタスタ…

吟子「……っと」

吟子「なんか……吹っ切れた気分。セラスのおかげ、かな」ポツリ

吟子(この想い、永遠を信じられないのなら……私は怖くても、途切れてしまうとしても、“今”できる事をしよう)

吟子(それがきっと、いつかは消えない“繋がり”になっている。そう感じられる日が遠くても来るはずだと、信じて)

99: 2026/02/10(火) 21:17:00 ID:???00
コンコンコン

吟子「百生吟子です。コーヒー、淹れたんだけど……いま大丈夫、花帆先輩?」

シーン…

吟子「…………作業中かな。それなら、明日にでも……いや、それじゃダメなんだって、吟子」ブンブン

吟子「花帆先輩ー? 合鍵あるんで……もう勝手に入りますよ!」

ガチャ

バタン…

吟子「……あれ?」

吟子「誰も……、居ない?」

第五話 終

100: 2026/02/10(火) 21:17:18 ID:???00
次回 第六話 JOKER.
   →2/11 21:00

引用: 【SS】花帆「あたし、再生産」