市場調査レポートや委託調査を手掛けるグローバルインフォメーション(川崎市)は、世界のマグネシウム(Mg)市場を調査し、生産・消費動向や価格、需要展望などを「金属マグネシウム:2029年までの展望 (第13版)」にまとめた。今後10年間のMgの消費量は、年平均成長率5%超で増える見通し。その一方で、環境規制への対応などから製造方法が変わる可能性が高まっているという。

 レポートによると、消費量の増加ペースにはかなりの地域差があり、中国では他の地域よりも高い増加率が見込まれる。需要のパターンも最終用途市場によって大きく異なり、鉄鋼の脱硫など従来の用途に比べて、合金への添加やチタンの精錬工程での使用が伸びている。

 Mgの需要と供給に大きく影響する因子として、レポートは「環境規制の強化」を挙げる。特に自動車の排ガス削減に向けた動きは、Mg合金とMgを含むアルミニウム合金の需要を拡大させている。例えば中国では、自動車1台当たりのMg含有量を2017年の8.6kgから2030年までに45kgへ引き上げる計画がある。

 同時に環境規制は、Mgの製造方法にも影響を及ぼしている。Mgの精錬には、大きく分けて電解法と熱還元法があり、1990年代初頭までは電解法が市場を独占していた。しかし、生産量が急激に増えた中国では熱還元法を用いるケースが多く、現在は世界の供給量の80%以上が熱還元法によるものだという。

 熱還元法は電解法より低コストな半面、二酸化炭素の排出量が多いという欠点がある。中国では、環境規制によって熱還元法で製造している一部の工場が閉鎖されており、この動きは今後も続く見込み。ただし、余剰生産能力を鑑みると供給が足りなくなる恐れは少なく、「この間に代替プロセスの台頭が期待される」(グローバルインフォメーション)としている。

 同社が環境負荷の少ないMg利用の「試金石」と見る事例が、カナダ・アライアンスマグネシウム(Alliance Magnesium、AMI)がケベック州で立ち上げるMg生産プロジェクトだ。同プロジェクトでは、ケベック州の廃アスベスト採掘事業から出る鉱山廃棄物からMg成分を抽出し、電解法でMg地金を造る。加えて、精錬には水力発電所から供給した電気を利用し、環境負荷を低減。同プロジェクトに出資する丸紅によると、製造プロセスにおける温暖化ガス排出量は、既存の方法の1/20だとする。

2019年12月12日付、丸紅のニュースリリース

 同プロジェクトにおけるMg地金の年間生産量は、補助事業であるMgスクラップのリサイクルによる生産も合わせて1万6700t。将来は5万tに拡張する計画もあり、実現されれば「現在の世界Mg需要の約5%を担うことになる」(丸紅)。2020年中にプラント建設に着工し、2021年に本格生産を始める予定だ。カナダ政府がSustainable Technology Development Canada(持続可能な技術開発カナダ)を通じて約900万米ドルを、丸紅は1260万米ドル(2019年12月のレートで1670万カナダドル)を出資する。

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